阪神・淡路大震災の教訓から平成8(1996)年に文化財保護法が改正され文化財の裾野を広げる『登録文化財制度』が創設されました。
その制度をささえるために平成13(2001)年、兵庫県教育委員会と建築士会が連携して始まった歴史的建造物の保存活用に関する専門知識をもつ建築士等の専門家(ヘリテージマネージャー)を育成するとりくみは、全国に広がりました。
ヘリテージマネージャーは、地域に眠る歴史的文化遺産を発見し、保存し、まちづくりに活かす技術力、専門知識、ネットワークを有する者たちです。
■古民家再生への関わり 鴨川/家造り体験塾での活動
千葉県建築士会の広報委員として、「民家紀行」を書いておられる道塚さんの原稿の手伝いをしたのが、古民家との出会いの始まりとなる。
2009年、建築士会行事の一部として、千葉県南房総の古民家見学を企画した際、鴨川大山千枚田倶楽部「家づくり塾」のプロジェクトリーダー黒川棟梁と出会う。以来、「家づくり塾」と関わりを継続しながら、県内外の古民家、歴史的文化遺産に触れ、ヘリテージマネージャーとしての経験を重ね、現在に至る。
■地域の歴史文化遺産を発見、保存し、まちづくりに活かす
※「ヘリテージマネージャー」として今まで行ってきた仕事※
① 建物所有者とご家族から相談を受け、空家となり損傷していた住宅の登録文化財申請、修復計画、維持保存・活用計画、工事監理。
期間:平成24(2012)年から平成31(2019)年
② 文化財となった後の災害時の修復。令和元(2019)年9月、10月の台風15号・19号被害による修復等。
③ 平成31(2019)年7月、県内文化財オーナー同士の交流・見学の調整・立会い。
④ 地域の歴史的文化遺産について調査し、県に報告。
※登録有形文化財を保存修理する場合などに国の補助制度があります。
■登録申請図書を作成し、工事監理を行った事例
『旧森田家住宅主屋』館山市北条2321
平成31(2019)年3月29日 国登録有形文化財 原簿登録
昭和初期に建てられた旧国鉄機関区長宅。駅前に開けた近代住宅地の様相を伝える和風住宅。10年以上空家だった為、雨漏りや外壁などの損傷があったが、アルバムや当時の記録、同時代の建物を検証して、修復、保存、活用方法を検討した。
内部の家具調度は、保存状態が良く当時の市民の暮らしぶりが良くわかる。登録申請準備と併行して、テナントを選定し修復工事計画に参加してもらった。外観は保存・修復し、内部は水廻り等近代化工事を行った。
現在はデイサービス施設として活用されている。また、この建物は館山市の「赤ちゃんの駅」に登録されているので、子育て中の親子も気軽に建物に立ち寄って休憩やおむつ交換に利用可能。日曜日には市教育委員会の出前口座にも座敷を開放して活用されることも。